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2012年9月24日 (月)

素人の知ったかぶり、玄人の無知 その1

ブログ形式で商品紹介をするようになって、5ヶ月近くになりました。おかげさまで、順調にアクセス数と訪問者数が増えています。リピート率がそう高くはないのですが、アクセスに関して面白いことがわかりましので、このタイトルをつくることにしました。参考にしていただければ、幸いです。

当舎を営業してから、いつの間に15年が過ぎました。当初よりソフトとハードの販売を行おうとしていましたが、体力・能力的に難しいく少しづつテリトリーを増やすしかありませんでした。未だに、目論見が達成せず、願望と現実の狭間でじたばたしている次第です。

ソフトの知識は同業者と友人・知人そしてなによりもお客様に教わってきまして、その上で実地研修を積んできたのです。ソフトは実に面白い、未だに聴いたことも・見たこともないレコードが毎年出てくるのです。ハードはこの点、そういうものはまずありません。それよりも、メンテナンスをすることの知識・経験・ノウハウを少しずつ積み上げることに全力を傾注したいと思っています。タイトルは自分のことも含みますので、知識・人格の向上を目指すということを主たる目的としています。当然、マニア・コレクターや同業者などへの無原則な非難ではありません。

さて、このブログ形式の話ですので、このハードのことになります。一応、ハードは部品と本体とに分けられているようで、抵抗・コンデンサー等の部品から、スピーカー・アンプ等の本体にというわけです。テーマは当方へのアクセス内容から、調べわかったことにします。

第1回 ポスト・チューブ Ed

Edの用途と最初の設計時期については、調べることができませんでした。ポスト・チューブについて、質問が何件かあったのと、Edの検索が増えました。こういう時にはヤフー・オークションを見るとその理由がわかります。

Klangfilm Ed   (KL 72406) で出品されていたのです。ebayで、先に落札されたのと同じかどうかは関知しませんが、同じであれば出品者にとっては少々不幸な落札金額かと思います。

その能書きです。

1.Edのルーツをたどっていくと有名なシーメンスからクラングフイルムにたどり着きます 伝説的なサウンドフィルムKL ED711プッシュプルパワーアンプリファイアー用に開発された伝説のフィルムのサウンドの長寿命ロングプロパワー出力三極管。

2.知らない人が多いので調べたところ,Edは伊藤喜多男氏がシーメンスのイエローリボンのEdしか無いと思われますが、テレフンケン、バルポー シーメンスとEdは製造されてました。

3.出力管のKL-72406は 直熱三極管AD-1を業務用に規格を上げてソケットを変更したモデルです。

4.Klangfilm Ed   (KL 72406) というタイトルにしたことが意味するものはEd=KL72406であるといいたいのでしょう。(これは私が推測したもので文章化されたものではありません。が、100人が100人同じ推測をすると思います。)

以上4点について、考察してみましょう。

1.Edのルーツについて。<クラングフイルムにたどり着きます >、何故なら<KL ED711プッシュプルパワーアンプリファイアー用に開発された>からなのです。論理展開の無謀なこじつけですが、この手の方法は、わたしもつい使用してしまうし、素人も玄人も同じ過ちを犯します。願望と妄想がつい先走り、筆を走らせてしまいます。

http://klangfilm.free.fr/index.php?lng=0&music=&type=0&frame=1&item=&title=&dir=&num=

1)からDocumentasions → 6.1 Amplifier → KL.711

2)からPictures → 1.1 Amplifier → KL.-711

を見ていただくとわかります。KL ED711というアンプが存在したのかどうかはわかりません。存在を証明するのはできますが、存在しないことを証明することは通常不可能です。本人に証明してもらうしかありません。
KL ED711ではなく、KL711というアンプがあることはこのサイトが証明しています。そのKL-711に使用されているのが、KL70505-KL70505-KL72407x2 Z2cです。さらに、もっとも大事なことですが、このアンプはSiemens製ではありません。Austria Siemens製なのです。ドイツ・シーメンスとオーストリア・シーメンスは同じSiemensですが、オーストリア・シーメンスは独シーメンスと同じにはつくらない大変独立性の強い会社です。これをごっちゃにしないようにしてください。Siemens旧型Ed(ST管のほう)はオーストリア製のみであった可能性が極めて高いのです。

さらに、KL72406ではなく、KL72407を使用しているところに、オーストリアらしさが満ち溢れていることがわかるでしょう。<406にしろ、407にしろポスト・チューブ・ソケットを使用しEdと同じような規格であることは、KL-711がEd用アンプといえるだろう。> そう考えて良いと思います。それは、KL-711がEdも対象としたアンプであったが、そのアンプのためにEdを製造したことを意味しているわけではありません。

すでに、1.の論理と展開が崩壊していることはおわかりでしょう。

なおKL72407は http://homepage3.nifty.com/Jiya/html/main.html を見てください。また、先のHP http://klangfilm.free.fr/index.php?lng=0&music=&type=0&frame=1&item=&title=&dir=&num= 中を良く探すとKL72406とKL72407とがでていますから、何が異なるのかおわかりになるでしょう。

2.は対象とするほどのことではありません。EdはSiemens、Valvo、戦後RWNが生産していました。Telefunken Edがあったことは、確認していません。4.のことでしょうか。この方はせめてEU Valveのサイトをご覧になっていれば、無知を曝さずにすんだのです。

3.は大きな問題があります。<AD-1を業務用に規格を上げてソケットを変更したモデル>。どう規格を変えたのでしょうか。私の資料では、規格が変更されたことが分かりません。これは、ご本人が提示する義務がある問題です。あるサイトには<確かAD-1はフィリップスの設計かと記憶していますが、使いやすい規模(250Vで4W取りだせる)だったようで各社様々な形状の物が生産されていました。
途中からAB級プッシュプル用に規格を上げた物がklangfilmに納入されたようです。Valvoの物は後年のKlangfilm代替という説もありますが、文献では未確認です。
> http://kaorin27.blog67.fc2.com/blog-entry-4.html

<AB級プッシュプル用に規格を上げた>とはどういうことでしょうか。2A3のように、A級ppからAB1級ppにすることを規格をあげるとはいいませんから、Epmaxを250Vから350Vにしたことを意味しているのでしょうか。

4.Klangfilm Ed   (KL 72406) というタイトルにしたことが意味するものはEd=KL72406であるということ。

3.の規格変更があって、AD1→ KL72406→ソケット変更 = Edとなったのでしょうか。本当にAD1とKL72406とは異なるのでしょうか。KL72406はEdと同じなのでしょうか。

最後に規格を調べて見ましょう。

EU VALVE にはデーターが記載されています。 http://www3.osk.3web.ne.jp/~euvalve/gallery/ed.html

ITEM Vf(V) If(A) Va(V) Vg(V) Ia(mA) Ri(ohm) Gm(mA/V   u    Ra(ohm) Po(W) Pa(W)
Ed      4   1.0  250  -49     65       650       6.0          3.9   2500      4.0      20
Eb      4      1.5   250   -45    120        660       5.0          3.2    ---      ---     30

ITEM Vf(V) If(A) Va(V) Vg(V) Ia(mA) Ri(ohm) Gm(mA/V    u   Ra(ohm) Po(W) Pa(W)
AD1    4     0.95   250  -45      60       670       6.0           4    2300      4.2       15
AD1/350 4 0.95   350  -75       35       750       5.0          7.5   3000      6.0       15
4683 =AD1/350

このデーターを信用してみると、Ed = AD1 ということができます。ばらつきのうちという程度です。規格を上げたということがわかるのは、プレート損失Pa(W)がAD1 15Wに対して、Ed 20Wとなっていることです。こういうことを規格を上げたというのですが、KL72406はどうなのでしょう。

AD1はTELEFUNKENとPHILIPSから規格表が出されていますが、Edはまだみたことがありません。

PHILIPS AD1 http://www.jogis-roehrenbude.de/Roehren-Geschichtliches/Ad1/ad1-german.pdf

TELEFUNKEN AD1 http://www.jogis-roehrenbude.de/Roehren-Geschichtliches/Ad1/AD1_TE.pdf

RFT Ed データー http://www.jogis-roehrenbude.de/Roehren-Geschichtliches/Ad1/Ed.pdf

努力不足で申し訳ないことです。伊藤喜多男氏のEdpp記事にもAD1と相当管データーを載せていますが、あれは東欧の出版物からの転載にすぎません。(Electronic universal Vade-Mecumというものです) 本来ですと、Siemensから規格表が来ていておかしくないのです。ご本人たちが、握り締めたか、Siemens自体に既にそのデーターが残されていなかったかでしょう。

後日 更に探すことができた規格表を基にもう少し考えて見ましょう。

とても、有意義な情報をいただきました。

<以前フィリップスAD1の件で1936-1937年のフィリップスのブリテンを提供した者です。
私の手元に1938年のシーメンス社のデータブックのコピーがあります。
それには、
Aa、Ba、Bas、Be、Bh、Bi、Ca、Cas、C3b、C3c、Cd、Ce、Cf、Da、Ea、E3a、Ed、Z2a、Z2d
以上の球の規格がEp-Ip特性及びEg-Ip特性とともに載っています。
データブックに記載されているEdの規格は、以下のとおりです。
Ef 4.0V   If 1.0A
Ep 250V   Eg -45V   Ip 60mA
Po 4W(歪5%)   Pd 20W
Rp 650Ω   Gm 6.2mA/V
ライフ3,000時間

この方には以前PHILIPS AD1のデーターをいただき、1936年にはPHILIPS AD1が絵とともにカタログに記載されていたのです。それは、後のAD1と大変よく似ていて、ガラスにカーボン塗装されていたタイプでした。そのことで、PHILIPSは欧州2次大戦以前よりAD1を生産していたことがわかりました。ただ、電極構造についてはわかりません。

Edはその方の情報によって当初よりプレート損失20Wであったことがわかりました。ということは、VALVO Edも同じであると考えてもよいことになります。そうすると、RWN/RFTのAD1・Edもそうなのでしょうね。

<AD1はPhilipsの設計でTelefunkenと同時発表のようです。
EdのオリジナルはPhilips傘下に入ったValvoのようで初めにEbが開発され効率化されてEdになったようです。
ST管のEdがOEMでSiemensに供給された可能性が高いです。
Edに対するTelefunkenの回答がEBIIIでサイドコンタクト管のまま出力が増大しています。>

貴重なお話ありがとうございます。公開が遅れたのは、いくつか確認すべきことがあるためです。残念ながら、今に至るまで確認できずに居ます。確認が要ることとは以下の点です。
1.PHILIPSの1930年代の現物です。TFK同時期発売は以前いただいた資料で、確認されました。外観は、4極管の三結構造のものと同じことがわかりましたが、構造がわかりません。純三極なのか、三結なのか。それによっては、AD1のPHILIPS設計が問われます。
2.Ebについては、詳細がわかりません。VALVO製がオリジナルかどうかが確認できないのです。EbとEdの違いは、フィラメント電流とプレート電流です。それ以外は、誤差のうちといえます。これだけでも、EdはEbを効率化したものといえます。では、EbとAD1の関係はいかなるものだったのでしょう。EbがAD1のオリジナルであれば、VALVOによって開発されたという可能性は否定できません。つまり、1930年代初めVALVO Eb開発、1936年PHILIPS AD1開発、1930年代後半Ed開発(VALVO?SIEMENS?)となるのです。現存するVALVO Eb,Edとカタログ上のPHILIPS AD1との関係が良くわからないのですが、しかし当然のことですが、当該品と時間軸を有する文物との照合が肝要です。
3.<ST管のEdがOEMでSiemensに供給された可能性が高いです。>という件に関しては、ある一点において考えられません。VALVOのEb,Ed,AD1に共通する造りの甘さがSIEMENS Eb,Edにはないのです。それは、全く別の製造ライン・工場であり、技術水準のとんでもない違いです。電極のスポット溶接、マイカの端末処理などをみれば、製造後のガス発生率・不純物の発生率が桁違いになることは当然です。
4.EdとTelefunken EBIIIとの関係はそうでしょう。ところで、TELEFUNKENにはKT231というものがありました。ベースを換えるとEbIIIになるというのですが、これは例外もあるということがいわれていました。Eb=KT231ver1、Ed≒EbIII=KT231ver2というのです。

以上のことは、プレート損失とフィラメント損失において、AD1 Eb Ed KT231 EbIIIが特徴を持っていることに注目してみるとわかるように思います。

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コメント

以前フィリップスAD1の件で1936-1937年のフィリップスのブリテンを提供した者です。
私の手元に1938年のシーメンス社のデータブックのコピーがあります。
それには、
Aa、Ba、Bas、Be、Bh、Bi、Ca、Cas、C3b、C3c、Cd、Ce、Cf、Da、Ea、E3a、Ed、Z2a、Z2d
以上の球の規格がEp-Ip特性及びEg-Ip特性とともに載っています。
データブックに記載されているEdの規格は、以下のとおりです。
Ef 4.0V If 1.0A
Ep 250V Eg -45V Ip 60mA
Po 4W(歪5%) Pd 20W
Rp 650Ω Gm 6.2mA/V
ライフ3,000時間
以上参考になれば幸いです。

投稿: massa | 2012年10月14日 (日) 20時43分

AD1はPhilipsの設計でTelefunkenと同時発表のようです。
EdのオリジナルはPhilips傘下に入ったValvoのようで初めにEbが開発され効率化されてEdになったようです。
ST管のEdがOEMでSiemensに供給された可能性が高いです。
Edに対するTelefunkenの回答がEBIIIでサイドコンタクト管のまま出力が増大しています。

投稿: 爺面寿春助 | 2013年1月14日 (月) 16時50分

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